えないかな。弱るな。――やあ、とうとう煙草盆へ火を入れましたね。なるほど」
「どうだ祥瑞は」
「何だか酒甕《さかがめ》のようですね」
「なに煙草盆さ。御前達が何だかだって笑うが、こうやって灰を入れて見るとやっぱり煙草盆らしいだろう」
 老人は蔓《つる》を持って、ぐっと祥瑞を宙に釣るし上げた。
「どうだ」
「ええ。好いですね」
「好いだろう。祥瑞は贋《にせ》の多いもんで容易には買えない」
「全体いくらなんですか」
「いくらだか当てて御覧」
「見当が着きませんね。滅多《めった》な事を云うとまたこの間の松見たように頭ごなしに叱られるからな」
「壱円八十銭だ。安いもんだろう」
「安いですかね」
「全く堀出《ほりだし》だ」
「へええ――おや椽側にもまた新らしい植木が出来ましたね」
「さっき万両《まんりょう》と植え替えた。それは薩摩《さつま》の鉢《はち》で古いものだ」
「十六世紀頃の葡萄耳《ポルトガル》人が被った帽子のような恰好《かっこう》ですね。――この薔薇《ばら》はまた大変赤いもんだな、こりゃあ」
「それは仏見笑《ぶっけんしょう》と云ってね。やっぱり薔薇の一種だ」
「仏見笑? 妙な名だな」

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