と同様だ。それに来て見ると、砂が立つ、埃《ほこり》が立つ。雑沓《ざっとう》はする、物価《もの》は貴《たか》し、けっして住み好いとは思わない。……」
「住み好い所ではありませんね」
「これでも昔は親類も二三軒はあったんだが、長い間|音信不通《いんしんふつう》にしていたものだから、今では居所も分らない。不断はさほどにも思わないが、こうやって、半日でも寝ると考えるね。何となく心細い」
「なるほど」
「まあ御前が傍《そば》にいてくれるのが何よりの依頼《たより》だ」
「御役にも立ちませんで……」
「いえ、いろいろ親切にしてくれてまことにありがたい。忙《いそが》しいところを……」
「論文の方がないと、まだ閑《ひま》なんですが」
「論文。博士論文だね」
「ええ、まあそうです」
「いつ出すのかね」
 いつ出すのか分らなかった。早く出さなければならないと思う。こんな引っ掛りがなければ、もうよほど書けたろうにと思う。口では
「今一生懸命に書いてるところです」と云う。
 先生は襦袢《じゅばん》の袖《そで》から手を抜いて、素肌の懐《ふところ》に肘《ひじ》まで収めたまま、二三度肩をゆすって
「どうも、ぞくぞくす
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