載《の》せる。
「ちょうどよく合うね。据《すわ》りがいい。紫檀《したん》かい」
「模擬《まがい》でしょう」
「模擬でも立派なものだ。代は?」
「何ようござんす」
「よくはない。いくらかね」
「両方で四円少しです」
「四円。なるほど東京は物が高いね。――少しばかりの恩給でやって行くには京都の方が遥《はる》かに好いようだ」
二三年前と違って、先生は些額《さがく》の恩給とわずかな貯蓄から上がる利子とで生活して行かねばならぬ。小野さんの世話をした時とはだいぶ違う。事に依れば小野さんの方から幾分か貢《みつ》いで貰いたいようにも見える。小野さんは畏《かしこ》まって控えている。
「なに小夜さえなければ、京都にいても差《さ》し支《つかえ》ないんだが、若い娘を持つとなかなか心配なもので……」と途中でちょっと休んで見せる。小野さんは畏まったまま応じなかった。
「私《わたし》などはどこの果《はて》で死のうが同じ事だが、後に残った小夜がたった一人で可哀想《かわいそう》だからこの年になって、わざわざ東京まで出掛けて来たのさ。――いかな故郷でももう出てから二十年にもなる。知合も交際《つきあい》もない。まるで他国
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