つ吟味して見ると先生の髯は一本ごとにひょろひょろしている。小野さんは鄭寧《ていねい》に帽を脱いで、無言のまま挨拶《あいさつ》をする。英吉利刈《イギリスがり》の新式な頭は、眇然《びょうぜん》たる「過去」の前に落ちた。
径《さしわたし》何十尺の円を描《えが》いて、周囲に鉄の格子を嵌《は》めた箱をいくつとなくさげる。運命の玩弄児《がんろうじ》はわれ先にとこの箱へ這入《はい》る。円は廻り出す。この箱にいるものが青空へ近く昇る時、あの箱にいるものは、すべてを吸い尽す大地へそろりそろりと落ちて行く。観覧車を発明したものは皮肉な哲学者である。
英吉利式《イギリスしき》の頭は、この箱の中でこれから雲へ昇ろうとする。心細い髯《ひげ》に、世を佗《わ》び古りた記念のためと、大事に胡麻塩《ごましお》を振り懸けている先生は、あの箱の中でこれから暗い所へ落ちつこうとする。片々《かたかた》が一尺昇れば片々は一尺下がるように運命は出来上っている。
昇るものは、昇りつつある自覚を抱いて、降《くだ》りつつ夜に行くものの前に鄭寧《ていねい》な頭《こうべ》を惜気もなく下げた。これを神の作れるアイロニーと云う。
「やあ、
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