い》に聞いた。
「うん。今、その角《かど》で電車を下りたばかりだ。だから、どっちへ行ってもいい」
 この答は少々論理に叶《かな》わないと、小野さんは思った。しかし論理はどうでも構わない。
「僕は少し急ぐから……」
「僕も急いで差支《さしつかえ》ない。少し君の歩く方角へ急いでいっしょに行こう。――その紙屑籠《かみくずかご》を出せ。持ってやるから」
「なにいいです。見っともない」
「まあ、出しなさい。なるほど嵩張《かさば》る割に軽いもんだね。見っともないと云うのは小野さんの事だ」と宗近君は屑籠を揺《ふ》りながら歩き出す。
「そう云う風に提《さ》げるとさも軽そうだ」
「物は提げ様一つさ。ハハハハ。こりゃ勧工場《かんこうば》で買ったのかい。だいぶ精巧なものだね。紙屑を入れるのはもったいない」
「だから、まあ往来を持って歩けるんだ。本当の紙屑が這入《はい》っていちゃ……」
「なに持って歩けるよ。電車は人屑をいっぱい詰めて威張って往来を歩いてるじゃないか」
「ハハハハすると君は屑籠の運転手と云う事になる」
「君が屑籠の社長で、頼んだ男は株主か。滅多《めった》な屑は入れられない」
「歌反古《うたほご
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