都から故《もと》の先生が出て来たものですから……」
「おや、そう、ちっとも知らなかったわ。それじゃ御忙い訳ね。そうですか。そうとも知らずに、飛んだ失礼を申しまして」と嘯《うそぶ》きながら頭を低《た》れた。緑の髪がまた動く。
「京都におった時、大変世話になったものですから……」
「だから、いいじゃありませんか、大事にして上げたら。――私はね。昨夕《ゆうべ》兄と一《はじめ》さんと糸子さんといっしょに、イルミネーションを見に行ったんですよ」
「ああ、そうですか」
「ええ、そうして、あの池の辺《ふち》に亀屋《かめや》の出店があるでしょう。――ねえ知っていらっしゃるでしょう、小野さん」
「ええ――知って――います」
「知っていらっしゃる。――いらっしゃるでしょう。あすこで皆《みんな》して御茶を飲んだんです」
 男は席を立ちたくなった。女はわざと落ちついた風を、飽《あ》くまでも粧《よそお》う。
「大変|旨《おいし》い御茶でした事。あなた、まだ御這入《おはいり》になった事はないの」
 小野さんは黙っている。
「まだ御這入にならないなら、今度《こんだ》是非その京都の先生を御案内なさい。私もまた一さんに
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