しわだ》てて、あるものはぽきりと絶えた萼《うてな》のみあらわである。
鯉が[#「鯉が」に傍点]と云おうとした小野さんはまた廃《や》めた。女の顔は前よりも寄りつけない。――女は御無沙汰をした男から、御無沙汰をした訳を云わせる気で、ただいいえ[#「いいえ」に傍点]と受けた。男は仕損《しま》ったと心得て、だいぶ暖《あったか》になりましたと気を換えて見たが、それでも験《げん》が見えぬので、鯉が[#「鯉が」に傍点]の方へ移ろうとしたのである。男は踏み留《とど》まれるところまで滑《すべ》って行く気で、気を揉《も》んでいるのに、女は依然として故の所に坐って動かない。知らぬ小野さんはまた考えなければならぬ。
四五日来なかったのが気に入らないなら、どうでもなる。昨夕《ゆうべ》博覧会で見つかったなら少し面倒である。それにしても弁解の道はいくらでもつく。しかし藤尾がはたして自分と小夜子を、ぞろぞろ動く黒い影の絶間なく入れ代るうちで認めたろうか。認められたらそれまでである。認められないのに、こちらから思い切って持ち出すのは、肌を脱いで汚《むさ》い腫物《しゅもつ》を知らぬ人の鼻の前《さき》に臭《にお》わせる
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