んだ手頸《てくび》だけが白く見える。萩に伏し薄《すすき》に靡《なび》く故里《ふるさと》を流離人《さすらいびと》はこんな風に眺《なが》める事がある。故里を離れぬ藤尾は何を眺めているか分らない。母は椽を曲って近寄った。
「何を考えているの」
「おや、御母《おっか》さん」と斜《なな》めな身体を柱から離す。振り返った眼つきには愁《うれい》の影さえもない。我《が》の女と謎の女は互に顔を見合した。実の親子である。
「どうかしたのかい」と謎が云う。
「なぜ」と我《が》が聞き返す。
「だって、何だか考え込んでいるからさ」
「何にも考えていやしません。庭の景色を見ていたんです」
「そう」と謎は意味のある顔つきをした。
「池の緋鯉《ひごい》が跳《は》ねますよ」と我は飽くまでも主張する。なるほど濁った水のなかで、ぽちゃりと云う音がした。
「おやおや。――御母《おっか》さんの部屋では少しも聞えないよ」
 聞えないんではない。謎で夢中になっていたのである。
「そう」と今度は我の方で意味のある顔つきをする。世はさまざまである。
「おや、もう蓮《はす》の葉が出たね」
「ええ。まだ気がつかなかったの」
「いいえ。今|
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