う男が脊髄病《せきずいびょう》を煩《わずら》って糸瓜《へちま》の水を取った。貧に誇る風流は今日《こんにち》に至っても尽きぬ。ただ小野さんはこれを卑《いや》しとする。
 仙人は流霞《りゅうか》を餐《さん》し、朝※[#「さんずい+亢」、第3水準1−86−55]《ちょうこう》を吸う。詩人の食物は想像である。美くしき想像に耽《ふけ》るためには余裕がなくてはならぬ。美くしき想像を実現するためには財産がなくてはならぬ。二十世紀の詩趣と元禄の風流とは別物である。
 文明の詩は金剛石《ダイヤモンド》より成る。紫《むらさき》より成る。薔薇《ばら》の香《か》と、葡萄《ぶどう》の酒と、琥珀《こはく》の盃《さかずき》より成る。冬は斑入《ふいり》の大理石を四角に組んで、漆《うるし》に似たる石炭に絹足袋《きぬたび》の底を煖《あたた》めるところにある。夏は氷盤《ひょうばん》に莓《いちご》を盛って、旨《あま》き血を、クリームの白きなかに溶《とか》し込むところにある。あるときは熱帯の奇蘭《きらん》を見よがしに匂わする温室にある。野路《のじ》や空、月のなかなる花野《はなの》を惜気《おしげ》も無く織り込んだ綴《つづれ》の丸
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