、明かに向側《むこうがわ》へ渡る。行く道に横《よこた》わるすべてのものを染め尽してやまざるを、ぷつりと截《き》って長い橋を西から東へ懸《か》ける。白い石に野羽玉《ぬばたま》の波を跨《また》ぐアーチの数は二十、欄に盛る擬宝珠《ぎぼしゅ》はことごとく夜を照らす白光の珠《たま》である。
「空より水の方が奇麗よ」と注意した糸子の声に連れて、残る三人の眼はことごとく水と橋とに聚《あつま》った。一間ごとに高く石欄干を照らす電光が、遠きこちらからは、行儀よく一列に空《くう》に懸って見える。下をぞろぞろ人が通る。
「あの橋は人で埋《うま》っている」
と宗近君が大きな声を出した。
 小野さんは孤堂《こどう》先生と小夜子《さよこ》を連れて今この橋を通りつつある。驚ろかんとあせる群集は弁天の祠《やしろ》を抜けて圧《お》して来る。向《むこう》が岡《おか》を下りて圧して来る。東西南北の人は広い森と、広い池の周囲《まわり》を捨ててことごとく細長い橋の上に集まる。橋の上は動かれぬ。真中に弓張を高く差し上げて、巡査が来る人と往く人を左へ右へと制している。来る人も往く人もただ揉《も》まれて通る。足を地に落す暇はない。楽
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