価である。泥海《ぬかるみ》に落つる星の影は、影ながら瓦《かわら》よりも鮮《あざやか》に、見るものの胸に閃《きらめ》く。閃く影に躍《おど》る善男子《ぜんなんし》、善女子《ぜんにょし》は家を空《むな》しゅうしてイルミネーションに集まる。
文明を刺激の袋の底に篩《ふる》い寄せると博覧会になる。博覧会を鈍き夜《よ》の砂に漉《こ》せば燦《さん》たるイルミネーションになる。いやしくも生きてあらば、生きたる証拠を求めんがためにイルミネーションを見て、あっと驚かざるべからず。文明に麻痺したる文明の民は、あっと驚く時、始めて生きているなと気がつく。
花電車が風を截《き》って来る。生きている証拠を見てこいと、積み込んだ荷を山下雁鍋《やましたがんなべ》の辺《あたり》で卸《おろ》す。雁鍋はとくの昔に亡《な》くなった。卸された荷物は、自己が亡くならんとしつつある名誉を回復せんと森の方《かた》にぞろぞろ行く。
岡は夜《よ》を掠《から》めて本郷から起る。高き台を朧《おぼろ》に浮かして幅十町を東へなだれる下《お》り口《くち》は、根津に、弥生《やよい》に、切り通しに、驚ろかんとするものを枡《ます》で料《はか》って
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