》い、人は色に趁《はし》る。狗と人とはこの点においてもっとも鋭敏な動物である。紫衣《しい》と云い、黄袍《こうほう》と云い、青衿《せいきん》と云う。皆人を呼び寄せるの道具に過ぎぬ。土堤《どて》を走る弥次馬《やじうま》は必ずいろいろの旗を担《かつ》ぐ。担がれて懸命に櫂《かい》を操《あやつ》るものは色に担がれるのである。天下、天狗《てんぐ》の鼻より著しきものはない。天狗の鼻は古えより赫奕《かくえき》として赤である。色のある所は千里を遠しとせず。すべての人は色の博覧会に集まる。
 蛾《が》は灯《とう》に集まり、人は電光に集まる。輝やくものは天下を牽《ひ》く。金銀、※[#「石+車」、第3水準1−89−5]※[#「石+渠」、第3水準1−89−12]《しゃこ》、瑪瑙《めのう》、琉璃《るり》、閻浮檀金《えんぶだごん》、の属を挙げて、ことごとく退屈の眸《ひとみ》を見張らして、疲れたる頭を我破《がば》と跳《は》ね起させるために光るのである。昼を短かしとする文明の民の夜会には、あらわなる肌に鏤《ちりばめ》たる宝石が独《ひと》り幅を利《き》かす。金剛石《ダイアモンド》は人の心を奪うが故《ゆえ》に人の心よりも高
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