しきりに密談をしているね」
「ことに因《よ》ると藤尾さんの事かも知れなくってよ」
「そうか、それじゃ聴きに行こうか」
「あら、御廃しなさいよ――わたし、火熨《ひのし》がいるんだけれども遠慮して取りに行かないんだから」
「自分の家《うち》で、そう遠慮しちゃ有害だ。兄さんが取って来てやろうか」
「いいから御廃しなさいよ。今下へ行くとせっかくの話をやめてしまってよ」
「どうも剣呑《けんのん》だね。それじゃこっちも気息《いき》を殺して寝転《ねころ》んでるのか」
「気息を殺さなくってもいいわ」
「じゃ気息を活かして寝転ぶか」
「寝転ぶのはもう好い加減になさいよ。そんなに行儀がわるいから外交官の試験に落第するのよ」
「そうさな、あの試験官はことによると御前と同意見かも知れない。困ったもんだ」
「困ったもんだって、藤尾さんもやっぱり同意見ですよ」
 裁縫《しごと》の手を休《や》めて、火熨に逡巡《ためら》っていた糸子は、入子菱《いりこびし》に縢《かが》った指抜を抽《ぬ》いて、※[#「年+鳥」、第3水準1−94−59]色《ときいろ》に銀《しろかね》の雨を刺す針差《はりさし》を裏に、如鱗木《じょりんもく》
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