御互に馬鹿よで好いじゃあないか」
「だって証拠があるんですもの」
「馬鹿の証拠がかい」
「ええ」
「そりゃ糸公の大発明だ。どんな証拠があるんだね」
「その盆栽はね」
「うん、この盆栽は」
「その盆栽はね――知らなくって」
「知らないとは」
「私大嫌よ」
「へええ、今度《こんだ》こっちの大発明だ。ハハハハ。嫌《きらい》なものを、なんでまた持って来たんだ。重いだろうに」
「阿父《おとう》さまが御自分で持っていらしったのよ」
「何だって」
「日が中《あた》って二階の方が松のために好いって」
「阿爺《おやじ》も親切だな。そうかそれで兄さんが馬鹿になっちまったんだね。阿爺親切にして子は馬鹿になりか」
「なに、そりゃ、ちょっと。発句《ほっく》?」
「まあ発句に似たもんだ」
「似たもんだって、本当の発句じゃないの」
「なかなか追窮するね。それよりか御前今日は大変立派なものを縫ってるね。何だいそれは」
「これ? これは伊勢崎《いせざき》でしょう」
「いやに光《ぴか》つくじゃないか。兄さんのかい」
「阿爺《おとうさま》のよ」
「阿爺《おとっさん》のものばかり縫って、ちっとも兄さんには縫ってくれないね。狐
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