さし》の先でしきりに敷居を敲《たた》いている。
「糸公。こりゃ御前の座敷の方が明かるくって上等だね」
「替えたげましょうか」
「そうさ。替えて貰ったところで余《あんま》り儲《もう》かりそうでもないが――しかし御前には上等過ぎるよ」
「上等過ぎたって誰も使わないんだから好いじゃありませんか」
「好いよ。好い事は好いが少し上等過ぎるよ。それにこの装飾物がどうも――妙齢の女子には似合わしからんものがあるじゃないか」
「何が?」
「何がって、この松さ。こりゃたしか阿父《おとっさん》が苔盛園《たいせいえん》で二十五円で売りつけられたんだろう」
「ええ。大事な盆栽よ。転覆《ひっくりかえし》でもしようもんなら大変よ」
「ハハハハこれを二十五円で売りつけられる阿爺《おとっさん》も阿爺だが、それをまた二階まで、えっちらおっちら担《かつ》ぎ上げる御前も御前だね。やっぱりいくら年が違っても親子は爭われないものだ」
「ホホホホ兄さんはよっぽど馬鹿ね」
「馬鹿だって糸公と同じくらいな程度だあね。兄弟だもの」
「おやいやだ。そりゃ私《わたし》は無論馬鹿ですわ。馬鹿ですけれども、兄さんも馬鹿よ」
「馬鹿よか。だから
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