夜を作り、海と陸《おか》とすべてを作りたる神は、七日目に至って休めと言った。謎の女を書きこなしたる筆は、日のあたる別世界に入ってこの湿気を払わねばならぬ。
日のあたる別世界には二人の兄妹《きょうだい》が活動する。六畳の中二階《ちゅうにかい》の、南を受けて明るきを足れりとせず、小気味よく開け放ちたる障子の外には、二尺の松が信楽《しがらき》の鉢《はち》に、蟠《わだか》まる根を盛りあげて、くの字の影を椽《えん》に伏せる。一間《いっけん》の唐紙《からかみ》は白地に秦漢瓦鐺《しんかんがとう》の譜を散らしに張って、引手には波に千鳥が飛んでいる。つづく三尺の仮の床《とこ》は、軸を嫌って、籠花活《かごはないけ》に軽い一輪をざっくばらんに投げ込んだ。
糸子は床の間に縫物の五色を、彩《あや》と乱して、糸屑《いとくず》のこぼるるほどの抽出《ひきだし》を二つまであらわに抜いた針箱を窓近くに添える。縫うて行く糸の行方《ゆくえ》は、一針ごとに春を刻《きざ》む幽《かす》かな音に、聴かれるほどの静かさを、兄は大きな声で消してしまう。
腹這《はらばい》は弥生《やよい》の姿、寝ながらにして天下の春を領す。物指《もの
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