》の蔓《つる》を鄭重《ていちょう》に拭き出した。
「いっそ、私からとくと談じて見ましょうか。あなたが云い悪《にく》ければ」
「いろいろ御心配を掛けまして……」
「そうして見るかね」
「どんなものでございましょう。ああ云う神経が妙になっているところへ、そんな事を聞かせましたら」
「なにそりゃ、承知しているから、当人の気に障《さわ》らないように云うつもりですがね」
「でも、万一私がこなたへ出てわざわざ御願い申したように取られると、それこそ後《あと》が大変な騒ぎになりますから……」
「弱るね、そう、疳《かん》が高くなってちゃあ」
「まるで腫物《はれもの》へ障《さわ》るようで……」
「ふうん」と和尚《おしょう》は腕組を始めた。裄《ゆき》が短かいので太い肘《ひじ》が無作法《ぶさほう》に見える。
 謎《なぞ》の女は人を迷宮に導いて、なるほどと云わせる。ふうんと云わせる。灰吹をぽんと云わせる。しまいには腕組をさせる。二十世紀の禁物は疾言《しつげん》と遽色《きょしょく》である。なぜかと、ある紳士、ある淑女に尋ねて見たら、紳士も淑女も口を揃《そろ》えて答えた。――疾言と遽色は、もっとも法律に触れやすいか
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