に合わす顔がございません。まあどうして、あんなに聞き訳がないんでございましょう。何か云い出すと、阿母《おっかさん》私《わたし》はこんな身体《からだ》で、とても家の面倒は見て行かれないから、藤尾に聟《むこ》を貰って、阿母《おっか》さんの世話をさせて下さい。私は財産なんか一銭も入らない。と、まあこうでござんすもの。私が本当の親なら、それじゃ御前の勝手におしと申す事も出来ますが、御存じの通りなさぬ中の間柄でございますから、そんな不義理な事は人様に対しても出来かねますし、じつに途方に暮れます」
 謎の女は和尚《おしょう》をじっと見た。和尚は大きな腹を出したまま考えている。灰吹がぽんと鳴る。紫檀《したん》の蓋《ふた》を丁寧に被《かぶ》せる。煙管《きせる》は転がった。
「なるほど」
 和尚の声は例に似ず沈んでいる。
「そうかと申して生《うみ》の母でない私が圧制がましく、むやみに差出た口を利《き》きますと、御聞かせ申したくないようなごたごたも起りましょうし……」
「ふん、困るね」
 和尚は手提《てさげ》の煙草盆の浅い抽出《ひきだし》から欝金木綿《うこんもめん》の布巾《ふきん》を取り出して、鯨《くじら
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