御厄介になりまして、御蔭《おかげ》様で方々見物させていただいたと申して大変喜んでおります。まことにあの通の我儘者《わがままもの》でございますから一さんもさぞ御迷惑でございましたろう」
「いえ、一の方でいろいろ御世話になったそうで……」
「どう致しまして、人様の御世話などの出来るような男ではございませんので。あの年になりまして朋友《ほうゆう》と申すものがただの一人もございませんそうで……」
「あんまり学問をすると、そう誰でも彼でもむやみに附合《つきあい》が出来にくくなる。アハハハハ」
「私には女でいっこう分りませんが、何だか欝《ふさ》いでばかりいるようで――こちらの一さんにでも連れ出していただかないと、誰も相手にしてくれないようで……」
「アハハハハ一はまた正反対。誰でも相手にする。家《うち》にさえいるとあなた、妹《いもと》にばかりからかって――いや、あれでも困る」
「いえ、誠に陽気で淡泊《さっぱり》してて、結構でございますねえ。どうか一さんの半分でいいから、欽吾がもう少し面白くしてくれれば好いと藤尾にも不断申しているんでございますが――それもこれもみんな彼人《あれ》の病気のせいだから、
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