だって京都だって同じ事だ」
 小夜子は勝手へ立った。孤堂先生は床の間の風呂敷包を解き始める。

        十

 謎《なぞ》の女は宗近《むねちか》家へ乗り込んで来る。謎の女のいる所には波が山となり炭団《たどん》が水晶と光る。禅家では柳は緑花は紅《くれない》と云う。あるいは雀はちゅちゅで烏《からす》はかあかあとも云う。謎の女は烏をちゅちゅにして、雀をかあかあにせねばやまぬ。謎の女が生れてから、世界が急にごたくさになった。謎の女は近づく人を鍋《なべ》の中へ入れて、方寸《ほうすん》の杉箸《すぎばし》に交《ま》ぜ繰り返す。芋をもって自《みず》からおるものでなければ、謎の女に近づいてはならぬ。謎の女は金剛石《ダイヤモンド》のようなものである。いやに光る。そしてその光りの出所《でどころ》が分らぬ。右から見ると左に光る。左から見ると右に光る。雑多な光を雑多な面から反射して得意である。神楽《かぐら》の面《めん》には二十通りほどある。神楽の面を発明したものは謎の女である。――謎の女は宗近家へ乗り込んでくる。
 真率なる快活なる宗近家の大和尚《だいおしょう》は、かく物騒な女が天《あめ》が下《した》に
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