》さんにも分らないね」
雲井の煙は会釈《えしゃく》なく、骨の高い鼻の穴から吹き出す。
「帰って来ても同《おんな》じ事ですね」
「同じ事さ。生涯《しょうがい》あれなんだよ」
御母《おっか》さんの疳《かん》の筋は裏から表へ浮き上がって来た。
「家《うち》を襲《つ》ぐのがあんなに厭《いや》なんでしょうか」
「なあに、口だけさ。それだから悪《にく》いんだよ。あんな事を云って私達《わたしたち》に当付《あてつ》けるつもりなんだから……本当に財産も何も入らないなら自分で何かしたら、善いじゃないか。毎日毎日ぐずぐずして、卒業してから今日《きょう》までもう二年にもなるのに。いくら哲学だって自分一人ぐらいどうにかなるにきまっていらあね。煮《に》え切らないっちゃありゃしない。彼人《あのひと》の顔を見るたんびに阿母《おっかさん》は疳癪《かんしゃく》が起ってね。……」
「遠廻しに云う事はちっとも通じないようね」
「なに、通じても、不知《しら》を切ってるんだよ」
「憎らしいわね」
「本当に。彼人がどうかしてくれないうちは、御前の方をどうにもする事が出来ない。……」
藤尾は返事を控えた。恋はすべての罪悪を孕《
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