の厚い※[#「ころもへん+施のつくり」、第3水準1−91−72]《ふき》の椽に引き擦るを軽く蹴返《けかえ》しながら、障子《しょうじ》をすうと開ける。
居住《いずまい》をそのままの母は、濃い眉《まゆ》を半分ほど入口に傾けて、
「おや御這入《おはいり》」と云う。
藤尾《ふじお》は無言で後《あと》を締める。母の向《むこう》に火鉢を隔ててすらりと坐った時、鉄瓶《てつびん》はしきりに鳴る。
母は藤尾の顔を見る。藤尾は火鉢の横に二つ折に畳んである新聞を俯目《ふしめ》に眺める。――鉄瓶は依然として鳴る。
口多き時に真《まこと》少なし。鉄瓶の鳴るに任せて、いたずらに差し向う親と子に、椽は静かである。浅葱桜は夕暮を誘いつつある。春は逝《ゆ》きつつある。
藤尾はやがて顔を上げた。
「帰って来たのね」
親、子の眼は、はたと行き合った。真は一瞥《いちべつ》に籠《こも》る。熱に堪《た》えざる時は骨を露《あら》わす。
「ふん」
長煙管《ながぎせる》に煙草《たばこ》の殻を丁《ちょう》とはたく音がする。
「どうする気なんでしょう」
「どうする気か、彼人《あのひと》の料簡《りょうけん》ばかりは御母《おっか
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