る第二指のありたけにあれぞと指《さ》す時、指す手はただ一筋の紛《まぎ》れなく明らかである。五本の指をあれ見よとことごとく伸ばすならば、西東は当るとも、当ると思わるる感じは鈍くなる。糸子は五指を並べたような女である。受ける感じが間違っているとは云えぬ。しかし変だ。物足らぬとは指点《さ》す指の短かきに過ぐる場合を云う。足り余るとは指点《さ》す指の長きに失する時であろう。糸子は五指を同時に並べたような女である。足るとも云えぬ。足り余るとも評されぬ。
人に指点《さ》す指の、細《ほっ》そりと爪先《つまさき》に肉を落すとき、明かなる感じは次第に爪先に集まって焼点《しょうてん》を構成《かたちづく》る。藤尾《ふじお》の指は爪先の紅《べに》を抜け出でて縫針の尖《と》がれるに終る。見るものの眼は一度に痛い。要領を得ぬものは橋を渡らぬ。要領を得過ぎたものは欄干《らんかん》を渡る。欄干を渡るものは水に落ちる恐れがある。
藤尾と糸子は六畳の座敷で五指と針の先との戦争をしている。すべての会話は戦争である。女の会話はもっとも戦争である。
「しばらく御目に懸《かか》りませんね。よくいらしった事」と藤尾は主人役に云
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