び三たび手を敲《たた》く。
乱れ起る岩石を左右に※[#「榮の木に代えて糸」、第3水準1−90−16]《めぐ》る流は、抱《いだ》くがごとくそと割れて、半ば碧《みど》りを透明に含む光琳波《こうりんなみ》が、早蕨《さわらび》に似たる曲線を描《えが》いて巌角《いわかど》をゆるりと越す。河はようやく京に近くなった。
「その鼻を廻ると嵐山《らんざん》どす」と長い棹《さお》を舷《こべり》のうちへ挿《さ》し込んだ船頭が云う。鳴る櫂《かい》に送られて、深い淵《ふち》を滑《すべ》るように抜け出すと、左右の岩が自《おのずか》ら開いて、舟は大悲閣《だいひかく》の下《もと》に着いた。
二人は松と桜と京人形の群《むら》がるなかに這《は》い上がる。幕と連《つら》なる袖《そで》の下を掻《か》い潜《く》ぐって、松の間を渡月橋に出た時、宗近君はまた甲野さんの袖をぐいと引いた。
赤松の二抱《ふたかかえ》を楯《たて》に、大堰《おおい》の波に、花の影の明かなるを誇る、橋の袂《たもと》の葭簀茶屋《よしずぢゃや》に、高島田が休んでいる。昔しの髷《まげ》を今の世にしばし許せと被《かぶ》る瓜実顔《うりざねがお》は、花に臨んで風に
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