胡麻竹《ごまだけ》の杖《つえ》を突いて来た。杖の先には光を帯びた鳥の羽《は》をふさふさと着けて、照る日に輝かした。縁に牽く黄色い縞の、袖らしい裏が、銀のように光ったと思ったらこれも行き過ぎた。
 すると、すぐ後から真白な顔があらわれた。額から始まって、平たい頬を塗って、顎《あご》から耳の附根《つけね》まで遡《さかの》ぼって、壁のように静かである。中に眸《ひとみ》だけが活きていた。唇《くちびる》は紅《べに》の色を重ねて、青く光線を反射した。胸のあたりは鳩《はと》の色のように見えて、下は裾《すそ》までばっと視線を乱している中に、小さなヴァイオリンを抱《かか》えて、長い弓を厳《おごそ》かに担《かつ》いでいる。二足で通り過ぎる後《うしろ》には、背中へ黒い繻子《しゅす》の四角な片《きれ》をあてて、その真中にある金糸《きんし》の刺繍《ぬい》が、一度に日に浮いた。
 最後に出たものは、全く小《ち》さい。手摺の下から転《ころ》げ落ちそうである。けれども大きな顔をしている。その中《うち》でも頭はことに大きい。それへ五色の冠《かんむり》を戴《いただ》いてあらわれた。冠の中央にあるぽっちが高く聳《そび》えて
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