き殺《ころ》さうとしてゐる。代助は無言の儘、三千代と抱き合つて、此|焔《ほのほ》の風に早く己れを焼《や》き尽《つく》すのを、此|上《うへ》もない本望とした。彼は兄には何の答もしなかつた。重い頭《あたま》を支へて石の様に動かなかつた。
「代助」と兄《あに》が呼んだ。「今日《けふ》はおれは御父《おとう》さんの使《つかひ》に来《き》たのだ。御前は此間《このあひだ》から家《うち》へ寄《よ》り付《つ》かない様になつてゐる。平生なら御|父《とう》さんが呼び付けて聞き糺《たゞ》す所だけれども、今日《けふ》は顔《かほ》を見るのが厭《いや》だから、此方《こつち》から行つて実否を確《たしか》めて来《こ》いと云ふ訳で来《き》たのだ。それで――もし本人に弁解があるなら弁解を聞くし。又弁解も何もない、平岡の云ふ所が一々根拠のある事実なら、――御父《おとう》さんは斯《か》う云はれるのだ。――もう生涯代助には逢はない。何処《どこ》へ行《い》つて、何《なに》をしやうと当人《とうにん》の勝手だ。其代り、以来子としても取り扱はない。又|親《おや》とも思つて呉《く》れるな。――尤もの事だ。そこで今《いま》御前《おまへ》の話
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