あき》れた調子で云つた。代助は依然として、口《くち》を開《ひら》かなかつた。
「何《ど》んな女だつて、貰《もら》はうと思へば、いくらでも貰《もら》へるぢやないか」と兄がまた云つた。代助はそれでも猶黙つてゐた。三度目に兄《あに》が斯う云つた。――
「御前《おまへ》だつて満更《まんざら》道楽をした事のない人間でもあるまい。こんな不始末を仕出《しで》かす位なら、今迄折角|金《かね》を使つた甲斐がないぢやないか」
代助は今更|兄《あに》に向つて、自分の立場《たちば》を説明する勇気もなかつた。彼《かれ》はつい此間《このあひだ》迄全く兄《あに》と同意見であつたのである。
十七の三
「姉《ねえ》さんは泣《な》いてゐるぜ」と兄《あに》が云つた。
「さうですか」と代助は夢の様に答へた。
「御父《おとう》さんは怒《おこ》つてゐる」
代助は答をしなかつた。たゞ遠い所を見る眼《め》をして、兄《あに》を眺めてゐた。
「御前《おまへ》は平生から能《よ》く分《わか》らない男だつた。夫でも、いつか分《わか》る時機が来《く》るだらうと思つて今日《こんにち》迄|交際《つきあ》つてゐた。然し今度《こん
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