凝《じつ》と代助の額《ひたひ》の所を見詰めてゐた。
手紙は細《こま》かい字で書《か》いてあつた。一行二行と読むうちに、読み終つた分《ぶん》が、代助の手先《てさき》から長く垂《た》れた。それが二尺|余《あまり》になつても、まだ尽きる気色はなかつた。代助の眼《め》はちらちらした。頭《あたま》が鉄《てつ》の様に重《おも》かつた。代助は強いても仕舞《しまひ》迄読み通さなければならないと考へた。総身《さうしん》が名状しがたい圧迫を受けて、腋《わき》の下《した》から汗《あせ》が流れた。漸く結末へ来《き》た時は、手に持つた手紙を巻《ま》き納《おさ》める勇気もなかつた。手紙は広《ひろ》げられた儘|洋卓《てえぶる》の上《うへ》に横《よこた》はつた。
「其所《そこ》に書《か》いてある事は本当なのかい」と兄《あに》が低い声で聞《き》いた。代助はたゞ、
「本当です」と答へた。兄《あに》は打衝を受けた人の様に一寸《ちよつと》扇の音《おと》を留《とゞ》めた。しばらくは二人《ふたり》とも口《くち》を聞《き》き得なかつた。良《やゝ》あつて兄《あに》が、
「まあ、何《ど》う云ふ了見で、そんな馬鹿な事をしたのだ」と呆《
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