どま》つた。守宮《やもり》はまだ一つ所に映《うつ》つてゐた。代助は深い溜息《ためいき》を洩《も》らして遂に小石川を南側《みなみがは》へ降《お》りた。
其晩は火の様に、熱くて赤い旋風《つむじ》の中《なか》に、頭《あたま》が永久に回転した。代助は死力を尽して、旋風《つむじ》の中《なか》から逃《のが》れ出様《でやう》と争つた。けれども彼の頭《あたま》は毫も彼の命令に応じなかつた。木の葉の如く、遅疑《ちぎ》する様子もなく、くるり/\と焔《ほのほ》の風《かぜ》に巻《ま》かれて行つた。
十七の二
翌日《あくるひ》は又|燬《や》け付く様に日《ひ》が高く出《で》た。外《そと》は猛烈な光《ひかり》で一面にいら/\し始めた。代助は我慢して八時|過《すぎ》に漸く起きた。起きるや否や眼《め》がぐらついた。平生の如く水《みづ》を浴《あ》びて、書斎へ這入《はい》つて凝《じつ》と竦《すく》んだ。
所へ門野《かどの》が来《き》て、御客さまですと知《し》らせたなり、入口《いりぐち》に立《た》つて、驚ろいた様に代助を見た。代助は返事をするのも退儀であつた。客は誰だと聞き返しもせずに手で支へた儘の顔
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