もう一遍自分に逢ひたがつて、死に切れずに息《いき》を偸《ぬす》んで生きてゐると想像した。代助は拳《こぶし》を固めて、割れる程平岡の門を敲《たゝ》かずにはゐられなくなつた。忽ち自分は平岡のものに指《ゆび》さへ触れる権利がない人間だと云ふ事に気が付いた。代助は恐《おそ》ろしさの余り馳《か》け出《だ》した。静かな小路《こうぢ》の中《うち》に、自分の足音《あしおと》丈が高く響《ひゞ》いた。代助は馳《か》けながら猶恐ろしくなつた。足《あし》を緩《ゆる》めた時は、非常に呼息《いき》が苦《くる》しくなつた。
道端《みちばた》に石段《いしだん》があつた。代助は半《なか》ば夢中で其所《そこ》へ腰を掛けたなり、額《ひたひ》を手で抑《おさ》えて、固《かた》くなつた。しばらくして、閉《ふ》さいだ眼《め》を開《あ》けて見ると、大きな黒い門《もん》があつた。門の上《うへ》から太い松が生垣の外《そと》迄枝を張つてゐた。代助は寺《てら》の這入り口《くち》に休んでゐた。
彼は立《た》ち上《あ》がつた。惘然《もうぜん》として又|歩《ある》き出した。少し来《き》て、再び平岡の小路へ這入つた。夢の様に軒燈の前で立留《たち
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