配しないでも可《い》いだらう」
平岡は暗《くら》い調子で、地《ぢ》に息《いき》を吐《は》く様に答へた。代助は堪《た》えられない思がした。
「若《も》しだね。若《も》し万一の事がありさうだつたら、其前にたつた一遍丈で可《い》いから、逢はして呉れないか。外《ほか》には決して何も頼《たの》まない。たゞ夫丈だ。夫丈を何《ど》うか承知して呉《く》れ玉へ」
平岡は口《くち》を結《むす》んだなり、容易に返事をしなかつた。代助は苦痛の遣《や》り所《どころ》がなくて、両手の掌《たなごゝろ》を、垢《あか》の綯《よ》れる程|揉《も》んだ。
「夫《それ》はまあ其時の場合にしやう」と平岡が重《おも》さうに答へた。
「ぢや、時々《とき/″\》病人の様子を聞《き》きに遣《や》つても可《い》いかね」
「夫《それ》は困《こま》るよ。君と僕とは何《なん》にも関係がないんだから。僕は是から先《さき》、君と交渉があれば、三千代を引き渡す時丈だと思つてるんだから」
代助は電流に感じた如く椅子の上《うへ》で飛び上《あ》がつた。
「あつ。解《わか》つた。三千代さんの死骸丈を僕に見せる積《つもり》なんだ。それは苛《ひど》い。そ
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