、虐待《ぎやくたい》でもすると思つてるんだらうが、僕だつて、まさか」
 代助は平岡の言《こと》を信じた。さうして腹の中《なか》で平岡に感謝した。平岡は次《つぎ》に斯《か》う云つた。
「僕は今日《けふ》の事がある以上は、世間的の夫《おつと》の立場《たちば》からして、もう君と交際する訳には行かない。今日《けふ》限り絶交するから左様《さう》思つて呉れ玉へ」
「仕方がない」と代助は首を垂れた。
「三千代の病気は今云ふ通り軽い方ぢやない。此先《このさき》何《ど》んな変化がないとも限《かぎ》らない。君も心配だらう。然し絶交した以上は已《やむ》を得ない。僕の在不在に係《かゝ》はらず、宅《うち》へ出入《ではい》りする事丈は遠慮して貰《もら》ひたい」
「承知した」と代助はよろめく様に云つた。其|頬《ほゝ》は益|蒼《あを》かつた。平岡は立ち上《あ》がつた。
「君、もう五分|許《ばかり》坐《すは》つて呉《く》れ」と代助が頼《たの》んだ。平岡は席に着《つ》いた儘無言でゐた。
「三千代さんの病気は、急に危険《きけん》な虞《おそれ》でもありさうなのかい」
「さあ」
「夫《それ》丈教へて呉れないか」
「まあ、さう心
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