来を犠牲にしても、君の望《のぞ》みを叶《かな》へるのが、友達の本分だと思つた。それが悪《わる》かつた。今位|頭《あたま》が熟してゐれば、まだ考へ様があつたのだが、惜しい事に若《わか》かつたものだから、余りに自然を軽蔑し過《す》ぎた。僕はあの時の事を思つては、非常な後悔の念に襲はれてゐる。自分の為《ため》ばかりぢやない。実際君の為《ため》に後悔してゐる。僕が君に対して真に済まないと思ふのは、今度の事件より寧ろあの時僕がなまじいに遣《や》り遂《と》げた義侠心だ。君、どうぞ勘弁して呉れ。僕は此通り自然に復讐《かたき》を取られて、君の前に手を突いて詫《あや》まつてゐる」
 代助は涙《なみだ》を膝《ひざ》の上《うへ》に零《こぼ》した。平岡の眼鏡《めがね》が曇つた。

       十六の十

「どうも運命だから仕方《しかた》がない」
 平岡は呻吟《うめ》く様な声を出《だ》した。二人《ふたり》は漸く顔《かほ》を見合せた。
「善後策に就て君の考があるなら聞かう」
「僕は君の前に詫《あや》まつてゐる人間だ。此方《こつち》から先《さき》へそんな事を云ひ出す権利はない。君の考から聞くのが順だ」と代助が云つ
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