訳らしくなつて不可《いけ》ないから、僕も成る可くなら卒直に云つて仕舞ひたいのだが、少し重大な事件だし、夫《それ》に習慣に反した嫌《きらひ》もあるので、若し中途で君に激されて仕舞ふと、甚だ困るから、是非仕舞迄君に聞《き》いて貰ひたいと思つて」
「まあ何だい。其|話《はなし》と云ふのは」
好奇心と共に平岡の顔《かほ》が益|真面目《まじめ》になつた。
「其代り、みんな話《はな》した後《あと》で、僕は何《ど》んな事を君から云はれても、矢張り大人しく仕舞迄聞く積だ」
平岡は何にも云はなかつた。たゞ眼鏡《めがね》の奥から大きな眼《め》を代助の上《うへ》に据ゑた。外《そと》はぎら/\する日が照《て》り付けて、椽側迄|射返《いかへ》したが、二人《ふたり》は殆んど暑さを度外に置いた。
代助は一段声を潜《ひそ》めた。さうして、平岡夫婦が東京へ来《き》てから以来、自分と三千代との関係が何《ど》んな変化を受けて、今日に至つたかを、詳しく語り出《だ》した。平岡は堅《かた》く唇《くちびる》を結《むす》んで代助の一語一句に耳《みゝ》を傾けた。代助は凡てを語るに約一時間余を費やした。其間に平岡から四遍程極めて単
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