、切り出すのが順当であつた。
「三千代さんは病気だつてね」
「うん。夫《それ》で社《しや》の方《ほう》も二三日|休《やす》ませられた様な訳で。つい君の所へ返事を出すのも忘れて仕舞つた」
「そりや何《ど》うでも構はないが。三千代さんはそれ程|悪《わる》いのかい」
平岡は断然たる答を一言葉《ひとことば》でなし得なかつた。さう急に何《ど》うの斯《か》うのといふ心配もない様だが、決して軽《かる》い方ではないといふ意味を手短かに述《の》べた。
此前|暑《あつ》い盛《さか》りに、神楽坂へ買物に出た序に、代助の所へ寄つた明日《あくるひ》の朝《あさ》、三千代は平岡の社へ出掛《でか》ける世話をしてゐながら、突《とつ》然|夫《おつと》の襟飾《えりかざり》を持つた儘卒倒した。平岡も驚ろいて、自分の支度《したく》は其儘に三千代を介抱した。十分の後三千代はもう大丈夫だから社へ出て呉《く》れと云ひ出《だ》した。口元《くちもと》には微笑の影さへ見えた。横《よこ》にはなつてゐたが、心配する程《ほど》の様子もないので、もし悪《わる》い様だつたら医者を呼ぶ様に、必要があつたら社へ電話を掛ける様に云ひ置いて平岡は出勤し
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