《め》を開《あ》けて見ると、自分の前に平岡が来《き》てゐる様にしたかつた。
仕舞に何か用事を考へ出《だ》さうとした。不図机の上《うへ》に乗《の》せてあつた梅子の封筒が眼《め》に付《つ》いた。代助は是だと思つて、強いて机の前に坐《すは》つて、嫂《あによめ》へ謝状を書《か》いた。成るべく叮嚀に書く積であつたが、状袋へ入れて宛名迄|認《したゝ》めて仕舞つて、時計を眺めると、たつた十五分程しか経《た》つてゐなかつた。代助は席《せき》に着《つ》いた儘、安《やす》からぬ眼《め》を空《くう》に据ゑて、頭《あたま》の中《なか》で何か捜《さが》す様に見えた。が、急に起つた。
「平岡が来《き》たら、すぐ帰《かへ》るからつて、少《すこ》し待《ま》たして置いて呉れ」と門野《かどの》に云ひ置《お》いて表へ出《で》た。強い日が正面から射竦《ゐすく》める様な勢で、代助の顔《かほ》を打《う》つた。代助は歩《ある》きながら絶《た》えず眼《め》と眉《まゆ》を動《うご》かした。牛込見附を這入つて、飯田町を抜《ぬ》けて、九段|坂下《ざかした》へ出《で》て、昨日《きのふ》寄《よ》つた古本屋《ふるほんや》迄|来《き》て、
「昨
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