の夜がぽうと白《しら》み渡《わた》つて来《き》た。代助は堪《たま》りかねて跳ね起きた。跣足《はだし》で庭先へ飛び下りて冷たい露《つゆ》を存分に踏んだ。夫から又椽側の籐椅子に倚つて、日の出《で》を待つてゐるうちに、うと/\した。
十六の七
門野《かどの》が寐惚《ねぼ》け眼《まなこ》を擦《こす》りながら、雨戸《あまど》を開《あ》けに出《で》た時、代助ははつとして、此|仮睡《うたゝね》から覚《さ》めた。世界の半面はもう赤い日《ひ》に洗《あら》はれてゐた。
「大変御早うがすな」と門野が驚ろいて云つた。代助はすぐ風呂場へ行つて水を浴《あ》びた。朝飯《あさめし》は食《く》はずに只紅茶を一杯飲んだ。新聞を見たが、殆んど何が書《か》いてあるか解《わか》らなかつた。読むに従つて、読《よ》んだ事が群《むら》がつて消えて行《い》つた。たゞ時計の針ばかりが気になつた。平岡が来《く》る迄にはまだ二時間あまりあつた。代助は其|間《あひだ》を何《ど》うして暮《く》らさうかと思つた。凝《じつ》としてはゐられなかつた。けれども何をしても手に付《つ》かなかつた。責《せ》めて此二時間をぐつと寐込んで、眼
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