るものが筋《すぢ》を引いて斜《なゝ》めに空《そら》を流れた。代助は又|蚊帳《かや》を捲《まく》つて這入つた。寐付《ねつ》かれないので団扇をはたはた云はせた。
家《いへ》の事は左のみ気に掛《か》からなかつた。職業もなるが儘になれと度胸を据ゑた。たゞ三千代の病気と、其源因と其結果が、ひどく代助の頭《あたま》を悩《なや》ました。それから平岡との会見の様子も、様々《さま/″\》に想像して見た。それも一方《ひとかた》ならず彼《かれ》の脳髄を刺激した。平岡は明日《あした》の朝九時|頃《ごろ》あんまり暑くならないうちに来《く》るといふ伝言であつた。代助は固より、平岡に向つて何《ど》う切り出《だ》さう抔と形式的の文句を考へる男《をとこ》ではなかつた。話す事は始めから極《きま》つてゐて、話す順序は其時の模《も》様次第だから、決して心配にはならなかつたが、たゞ成る可く穏かに自分の思ふ事が向ふに徹する様にしたかつた。それで過度の興奮を忌んで、一夜の安静を切に冀つた。成るべく熟睡《じゆくすい》したいと心掛けて瞼《まぶた》を合せたが、生憎眼が冴えて昨夕《ゆふべ》よりは却つて寐《ね》苦しかつた。其|内《うち》夏
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