に元の如くに巻き収めて、無言の感謝を改めて嫂《あによめ》に致した。梅子よりと書いた字は寧ろ拙であつた。手紙の体の言文一致なのは、かねて代助の勧めた通りを用ひたのであつた。
代助は洋燈《ランプ》の前にある封筒を、猶つくづくと眺《なが》めた。古《ふる》い寿《じゆ》命が又一ヶ月|延《の》びた。晩《おそ》かれ早かれ、自己を新たにする必要のある代助には、嫂《あによめ》の志は難有いにもせよ、却つて毒になる許《ばかり》であつた。たゞ平岡と事を決する前は、麺麭《パン》の為《ため》に働らく事を肯《うけが》はぬ心を持つてゐたから、嫂《あによめ》の贈物《おくりもの》が、此際《このさい》糧食としてことに彼には貴《たつ》とかつた。
其晩も蚊帳へ這入《はい》る前にふつと、洋燈《ランプ》を消《け》した。雨戸《あまど》は門野《かどの》が立《た》てに来《き》たから、故障も云はずに、其|儘《まゝ》にして置いた。硝子戸《がらすど》だから、戸越《とご》しにも空《そら》は見えた。たゞ昨夕《ゆふべ》より暗《くら》かつた。曇《くも》つたのかと思つて、わざ/\椽側迄|出《で》て、透《す》かす様にして軒《のき》を仰ぐと、光《ひか》
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