――
「此間から奥さんの事で貴方《あなた》も嘸《さぞ》御迷惑なすつたらう。此方《こつち》でも御父《おとう》様始め兄《にい》さんや、私《わたくし》は随分心配をしました。けれども其甲斐もなく先達て御|出《いで》の時《とき》、とう/\御父《おとう》さんに断然御|断《ことわ》りなすつた御様子、甚だ残念ながら、今では仕方がないと諦《あき》らめてゐます。けれども其節御父様は、もう御前の事は構はないから、其積でゐろと御怒りなされた由、後《あと》で承りました。其|後《のち》あなたが御出《おいで》にならないのも、全く其|為《ため》ぢやなからうかと思つてゐます。例月のものを上《あ》げる日《ひ》には何《ど》うかとも思ひましたが、矢張り御|出《いで》にならないので、心配してゐます。御父さんは打遣《うちや》つて置けと仰います。兄さんは例の通り呑気で、困つたら其|内《うち》来《く》るだらう。其時|親爺《おやぢ》によく詫《あやま》らせるが可《い》い。もし来《こ》ない様だつたら、おれの方から行つてよく異見してやると云つてゐます。けれども、結婚の事は三人とももう断念してゐるんですから、其点では御迷惑になる様な事はありま
前へ
次へ
全490ページ中455ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夏目 漱石 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング