たより》もなかつた。其中《そのうち》例月《れいげつ》の通り、青山《あをやま》へ金《かね》を貰《もら》ひに行くべき日《ひ》が来《き》た。代助の懐中《くわいちう》は甚だ手薄《てうす》になつた。代助は此前|父《ちゝ》に逢《あ》つた時以後、もう宅《うち》からは補助を受けられないものと覚悟を極《き》めてゐた。今更平気な顔《かほ》をして、のそ/\出掛《でかけ》て行く了見は丸でなかつた。何《なに》二ヶ月や三ヶ月は、書物か衣類を売り払つても何《ど》うかなると腹《はら》の中《なか》で高《たか》を括《くゝ》つて落ち付《つ》いてゐた。事《こと》の落着次第|緩《ゆつ》くり職業を探《さが》すと云ふ分別もあつた。彼《かれ》は平生から人《ひと》のよく口癖《くちくせ》にする、人間は容易な事《こと》で餓死するものぢやない、何《ど》うにかなつて行くものだと云ふ半諺《はんことわざ》の真理を、経験しない前から信《しん》じ出《だ》した。
 五日《いつか》目に暑《あつさ》を冒《おか》して、電車へ乗《の》つて、平岡の社迄|出掛《でか》けて行つて見て、平岡は二三日出社しないと云ふ事が分《わか》つた。代助は表へ出て薄汚《うすぎた》ない
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