る位なら、なんで平岡君に僕から話すもんですか」
三千代は又泣き出《だ》した。
「ぢや能《よ》く詫《あやま》ります」
代助は日《ひ》の傾くのを待《ま》つて三千代を帰《かへ》した。然し此前の時の様に送《おく》つては行《い》かなかつた。一時間程書斎の中で蝉の声を聞《き》いて暮《くら》した。三千代に逢つて自分の未来を打ち明けてから、気分が薩張りした。平岡へ手紙を書《か》いて、会見の都合を聞き合せ様として、筆を持つて見たが、急に責任の重いのが苦になつて、拝啓以後を書き続《つゞ》ける勇気が出なかつた。卒然、襯衣《しやつ》一枚になつて素足で庭へ飛《と》び出《だ》した。三千代が帰る時は正体なく午睡《ひるね》をしてゐた門野《かどの》が、
「まだ早いぢやありませんか。日が当つてゐますぜ」と云ひながら、坊主|頭《あたま》を両手で抑えて椽端にあらはれた。代助は返事もせずに、庭の隅へ潜《もぐ》り込んで竹の落葉《おちば》を前の方へ掃き出《だ》した。門野《かどの》も已を得ず着物《きもの》を脱《ぬ》いで下《お》りて来《き》た。
狭い庭だけれども、土《つち》が乾《かは》いてゐるので、たつぷり濡らすには大分《だいぶ
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