だ。無論事実を能く納得|出来《でき》る様に話《はな》す丈です。さうして、僕の悪《わる》い所はちやんと詫《あや》まる覚悟です。其結果は僕の思ふ様に行《い》かないかも知れない。けれども何《ど》う間違《まちが》つたつて、そんな無暗な事は起らない様にする積《つもり》です。斯《か》う中途半端《ちうとはんぱ》にしてゐては、御互も苦痛だし、平岡君に対しても悪《わる》い。たゞ僕が思ひ切つて左様《さう》すると、あなたが、嘸《さぞ》平岡君に面目なからうと思つてね。其所《そこ》が御気の毒なんだが、然し面目ないと云へば、僕だつて面目ないんだから。自分の所為に対しては、如何に面目なくつても、徳義上の責任を負ふのが当然だとすれば、外《ほか》に何等の利益がないとしても、御互の間に有《あつ》た事丈は平岡君に話さなければならないでせう。其上今の場合では是からの所置を付《つ》ける大事の自白なんだから、猶更必要になると思ひます」
「能く解《わか》りましたわ。何《ど》うせ間違《まちが》へば死ぬ積なんですから」
「死ぬなんて。――よし死ぬにしたつて、是から先《さき》何《ど》の位《くらゐ》間《あひだ》があるか――又そんな危険があ
前へ
次へ
全490ページ中446ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夏目 漱石 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング