ない。半人前にもなれない。だから」と云ひ淀《よど》んだ。
「だから、何《ど》うなさるんです」
「だから、僕の思ふ通り、貴方《あなた》に対して責任が尽せないだらうと心配してゐるんです」
「責任つて、何《ど》んな責任なの。もつと判然《はつきり》仰《おつ》しやらなくつちや解《わか》らないわ」
代助は平生から物質的状況に重きを置くの結果、たゞ貧苦が愛人の満足に価《あたひ》しないと云ふ事丈を知つてゐた。だから富《とみ》が三千代に対する責任の一つと考へたのみで、夫《それ》より外《ほか》に明らかな観念は丸で持つてゐなかつた。
「徳義上の責任ぢやない、物質上の責任です」
「そんなものは欲《ほ》しくないわ」
「欲《ほ》しくないと云《い》つたつて、是非必要になるんです。是から先《さき》僕が貴方《あなた》と何《ど》んな新《あた》らしい関係に移つて行くにしても、物質上の供給が半分は解決者ですよ」
「解決者でも何《なん》でも、今更《いまさら》左様《そん》な事を気にしたつて仕方がないわ」
「口《くち》ではさうも云へるが、いざと云ふ場合になると困るのは眼《め》に見えてゐます」
三千代は少し色《いろ》を変《か》へ
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