中《なか》にも若《わか》い沢《つや》が宿《やど》つてゐた。代助は生々《いき/\》した此美くしさに、自己の感覚を溺らして、しばらくは何事も忘れて仕舞つた。が、やがて、此美くしさを冥々の裡《うち》に打ち崩しつゝあるものは自分であると考へ出《だ》したら悲《かな》しくなつた。彼は今日《けふ》も此|美《うつ》くしさの一部分を曇らす為《ため》に三千代を呼んだに違《ちがひ》なかつた。
 代助は幾|度《たび》か己れを語る事を※[#「足へん+厨」、第3水準1−92−39]躇した。自分の前に、これ程幸福に見える若い女を、眉《まゆ》一筋《ひとすぢ》にしろ心配の為《ため》に動《うご》かさせるのは、代助から云ふと非常な不徳義であつた。もし三千代に対する義務の心が、彼の胸のうちに鋭《する》どく働らいてゐなかつたなら、彼は夫《それ》から以後の事情を打ち明ける事の代りに、先達ての告白を再び同じ室《へや》のうちに繰り返して、単純なる愛の快感の下《もと》に、一切《いつさい》を放擲して仕舞つたかも知れなかつた。
 代助は漸くにして思ひ切つた。
「其後《そのご》貴方《あなた》と平岡との関係は別に変りはありませんか」
 三千代
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