なか》に負《しよ》つて、高い絶壁の端《はじ》迄押し出された様な心持であつた。
彼《かれ》は第一の手段として、何か職業を求めなければならないと思つた。けれども彼《かれ》の頭《あたま》の中《なか》には職業と云ふ文字がある丈で、職業其物は体を具えて現《あら》はれて来《こ》なかつた。彼は今日迄如何なる職業にも興味を有つてゐなかつた結果として、如何なる職業を想ひ浮《うか》べて見ても、只《たゞ》其上《そのうへ》を上滑《うはすべ》りに滑《すべ》つて行く丈で、中《なか》に踏《ふ》み込んで内部から考へる事は到底出来なかつた。彼には世間が平《ひら》たい複雑な色分《いろわけ》の如くに見えた。さうして彼《かれ》自身は何等の色《いろ》を帯びてゐないとしか考へられなかつた。
凡ての職業を見渡した後《のち》、彼《かれ》の眼《め》は漂泊者の上《うへ》に来《き》て、そこで留《と》まつた。彼は明《あき》らかに自分の影を、犬と人《ひと》の境《さかい》を迷《まよ》ふ乞食《こつじき》の群《むれ》の中《なか》に見|出《いだ》した。生活の堕落は精神の自由を殺す点に於て彼の尤も苦痛とする所であつた。彼は自分の肉体に、あらゆる醜穢
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