た時、梅子は待ち構へた様に、
「何《ど》うなすつて」と聞いた。代助は答へ様もなかつた。
十六の一
翌日《あくるひ》眼《め》が覚《さ》めても代助の耳の底《そこ》には父《ちゝ》の最後の言葉が鳴《な》つてゐた。彼《かれ》は前後の事情から、平生以上の重《おも》みを其内容に附着しなければならなかつた。少《すく》なくとも、自分丈では、父《ちゝ》から受ける物質的の供給がもう絶えたものと覚悟する必要があつた。代助の尤も恐るゝ時期は近づいた。父《ちゝ》の機嫌を取り戻《もど》すには、今度の結婚を断るにしても、あらゆる結婚に反対してはならなかつた。あらゆる結婚に反対しても、父《ちゝ》を首肯《うなづ》かせるに足る程の理由を、明白に述べなければならなかつた。代助に取つては二つのうち何《いづ》れも不可能であつた。人生に対する自家の哲学《フヒロソフヒー》の根本に触れる問題に就いて、父《ちゝ》を欺くのは猶更不可能であつた。代助は昨日《きのふ》の会見を回顧して、凡てが進むべき方向に進んだとしか考へ得なかつた。けれども恐ろしかつた。自己が自己に自然な因果を発展させながら、其因果の重《おも》みを脊中《せ
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