を謝絶されたのも、自分が父《ちゝ》の意志に背く恐《おそれ》があるから父《ちゝ》の方でわざと、延《の》ばしたものと推してゐた。今日《けふ》逢《あ》つたら、定めて苦《にが》い顔をされる事と覚悟を極《き》めてゐた。ことによれば、頭《あたま》から叱《しか》り飛《と》ばされるかも知れないと思つた。代助には寧ろ其方《そのほう》が都合が好《よ》かつた。三|分《ぶ》の一《いち》は、父《ちゝ》の暴怒《ぼうど》に対する自己の反動を、心理的に利用して、判然《きつぱり》断《ことわ》らうと云ふ下心《したごゝろ》さへあつた。代助は父《ちゝ》の様子、父《ちゝ》の言葉|遣《つかひ》、父の主意、凡てが予期に反して、自分の決心を鈍《にぶ》らせる傾向に出《で》たのを心苦しく思つた。けれども彼は此|心苦《こゝろぐる》しさにさへ打ち勝つべき決心を蓄《たくは》へた。
「貴方《あなた》の仰《おつ》しやる所は一々《いち/\》御尤もだと思ひますが、私《わたくし》には結婚を承諾する程の勇気がありませんから、断《ことわ》るより外に仕方がなからうと思ひます」ととう/\云つて仕舞つた。其時|父《ちゝ》はたゞ代助の顔《かほ》を見てゐた。良《やゝ
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