て頂戴」
三千代の調子は、此時急に判然《はつきり》した。沈《しづ》んではゐたが、前に比べると非常に落ち着《つ》いた。然ししばらくしてから、又
「たゞ、もう少し早く云つて下《くだ》さると」と云ひ掛けて涙ぐんだ。代助は其時斯う聞いた。――
「ぢや僕が生涯|黙《だま》つてゐた方が、貴方《あなた》には幸福だつたんですか」
「左様《さう》ぢやないのよ」と三千代は力を籠めて打ち消した。「私《わたくし》だつて、貴方《あなた》が左様《さう》云つて下《くだ》さらなければ、生きてゐられなくなつたかも知れませんわ」
今度は代助の方が微笑した。
「夫《それ》ぢや構はないでせう」
「構《かま》はないより難有いわ。たゞ――」
「たゞ平岡に済《す》まないと云ふんでせう」
三千代は不安らしく首肯《うなづ》いた。代助は斯う聞いた。――
「三千代さん、正直に云つて御覧。貴方《あなた》は平岡を愛してゐるんですか」
三千代は答へなかつた。見るうちに、顔の色が蒼くなつた。眼《め》も口《くち》も固《かた》くなつた。凡てが苦痛の表情であつた。代助は又聞いた。
「では、平岡は貴方《あなた》を愛してゐるんですか」
三千代は矢
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