本望なのです。今日《けふ》斯《こ》うやつて、貴方《あなた》を呼んで、わざ/\自分の胸を打ち明けるのも、実は貴方《あなた》から復讐《ふくしう》されてゐる一部分としか思やしません。僕は是で社会的に罪を犯したも同じ事です。然し僕はさう生れて来《き》た人間《にんげん》なのだから、罪を犯す方が、僕には自然なのです。世間に罪を得ても、貴方《あなた》の前に懺悔《ざんげ》する事が出来れば、夫で沢山なんです。是程嬉しい事はないと思つてゐるんです」

       十四の十一

 三千代は涙《なみだ》の中《なか》で始《はじ》めて笑つた。けれども一言《ひとこと》も口《くち》へは出《だ》さなかつた。代助は猶己れを語る隙《ひま》を得た。――
「僕は今更こんな事を貴方《あなた》に云ふのは、残酷だと承知してゐます。それが貴方《あなた》に残酷に聞えれば聞える程僕は貴方《あなた》に対して成功したも同様になるんだから仕方がない。其上僕はこんな残酷な事を打ち明けなければ、もう生きてゐる事が出来なくなつた。つまり我儘《わがまゝ》です。だから詫《あやま》るんです」
「残酷では御座いません。だから詫《あや》まるのはもう廃《よ》し
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